チャンスに恵まれ、黒部の『前沢パッシブハウス』に宿泊体験する事が出来ました。
普段住まいの設計を主としている事もあり非常に興味が有りました。
『前沢パッシブハウス』はYKKが黒部に建てたモデルハウスです。
国産の実売されているサッシを用いて(一部特注品有)、建物に高い外皮性能を
持たせる事で、冬季の日射取得と夏季の日射遮蔽をコントロールし、より少ない
エネルギーで非常に快適な空間が創られていました。
当日は現地に担当者の方がいらっしゃり、建物について丁寧な説明を頂き、私達の
マニアックな質問にも答えて頂き、とても為になるものでした。外回りから内部、
更には地下空間にまで案内してもらい、包み隠される事なく細部まで見学出来ました。
この建物、何よりも驚きなのが、非常に高い断熱性能・気密性能のお陰で冬季には
40坪強有る建物内部の温熱環境を、高基礎にした地下空間に設けた10畳用の
エアコン一台のみでコントロールしています。
勿論、日中に南面(全面トリプルガラスのAPW430)から取得した太陽光を上手に
利用もしています。
それにしても到着した16時過ぎも夜も、一晩過ごした次の日の朝の室温もほぼ変化ナシ。
その室音差は建物内部でも1階の寝室、中2階に当るリビング、2階の寝室でも
有りません。(外部は7時の時点で5.9℃)
普段使用している持参した温湿度計で測定したのですが、湿度が30%台と少し
乾燥気味でしたが、これはモデルハウスとしての特性上(竣工後、ずっと数値測定を
しているそうです)、キッチンの使用が不可だった為、3度の煮炊きをしていないという事が
影響しているのかな、と思いました。浴室は使えました。(これも快適)
普通に家族が生活を行えば、さらに快適な環境になると予想されます。
また体感して驚いたのですが、内部の床は杉の無垢、タモの無垢、タイルと3種類が
使用されていたのですが、どの床を踏んでも温度差が無いのです。
この建物、昨今よく聞くZEHのレベルを遥かに超える性能を装備しています。
寒い地域では薪ストーブを入れれば、暖かさの確保は出来るかもしれません。
それには100万円を超える導入費用と、毎年の薪の確保に掛かる労力と時間、更にまた
費用が掛かります。また夏季、温暖な地域ではエアコンを設置しての冷房を考えなくては
なりません。
この『前沢パッシブハウス』では年間の冷暖房費はなんと約¥35,000-だそうです。
この性能を装備するには相応の施工費用が掛かっているのが容易に想像出来ますが、
それでもこの快適性と維持費、地球環境を考えた上でのクリーンさには非常に魅力を
感じました。
またこの様な建物を企画・建築し、データを採りつつ、私達に広く公開している
YKKという企業にも非常に好感を抱きました。
なかなかこのブログだけでは伝えきれない位の経験でした。今後の仕事にも
とても役立てる事が出来る宿泊体験でした。ありがとうございました。